2005年のボルドーに関するブラッチ報告書[その3]

〜ワインについて・前編〜

いよいよワインニュース「ボルドー編」第3回目となりますブラッチ報告書[その3]〜ワインについて・前編〜。いよいよ収穫も終わり、ぶどうからワインへと姿を変えていきます。今回は前回までの「ぶどうの樹」編に続いての第二部レポート、「ワイン」編となりますので未見の方は是非、前回のレポートもご覧下さいませ。この「ワインについて」は、今年の醸造と収量などからのレポートになります。醸造の段階で徐々に見えてくるワインの形。果たして2005 年のヴィンテージはいったいどのようになるのでしょう?

■醸造

非常に高い糖度と抽出が容易なタンニンの結びつきを前にして、ほとんど誰もが考えたことは、伝統的に行われているように発酵の最終段階ではなく、初期の段階でタンニンを抽出してしまったほうが賢明ではないか、ということだった。そのため発酵前のマセラシオン、初期段階でのデレスタージュ(液抜き静置法)とルモンタージュ(液循環)が一般に多く行われた一方で、発酵後半あるいは発酵後のマセラシオンの頻度は低くなった。果皮を分離して発酵を終了させる前の段階で、澱引きしてしまった者も実際に多かった。その際共通認識となったのは、今年に限っては無理に何かをする必要はない、そして、あまり高いアルコール分をマセラシオンしてしまうと、アルコールが強く抽出過剰な90年代のワインのように苦みが勝ってしまうだろう、という点である。いずれにせよ、市場はもはやボルドーに重量感を求めていない。そしていずれにせよ、このヴィンテージは何もしなくても十分重量感に溢れているという明確な認識があったようだ。そこで、“gentle(やさしく)”というのが合い言葉になった。しかしここまでパワフルだと、抽出が不十分な場合は“アルコール過剰でバランスを失した”ワインに仕上がってしまう恐れもあるため、すべてがバランスの問題といえるだろう。そこで、早めにタンニンに取りかかり、アルコールが増加して種子のタンニンを引き出してしまう前に、タンニン抽出をすませてしまうことで、妥協を図ろうとしたのだ。少なくともそうしておけば、必要とあらば発酵終了後のマセラシオンを延長したり、あるいは同じ年の上等なプレス・ワインを余分に加えたりするというオプションも残されているのである。

糖度の高い年には発酵の問題がつきものだ。残糖と揮発酸に付随する問題が原因となって、発酵が中断してしまったタンクのひとつやふたつなら、誰もが抱えてしまうものである。確かにこの手の問題は、昔に比べて今日では対処しやすくなっている。1921年には、複数の一級シャトーですら、そのワインをきちんと発酵させることができなかったという噂があるくらいだ。今日では、糖度の高いマストをスムーズに醸造するのに向いた酵母をセレクトすることも可能で、これらを使うと通常よりも発酵に時間がかかるものの、ふつうはあまり多くの問題を起こすことはない。多くの造り手がいまだに人工酵母をかたくなに拒否し、固有の天然酵母を使って、人工酵母以上の時間をかけて発酵を続けている。その結果、「多少の揮発酸があっても完璧に自然なワイン」と「揮発酸のない技術的に完璧なワイン」の対立を構図とするワイン論争が巻き起ったりもする。しかし結局のところ、いまだに力強いと評判の47年、29年、そして1870年代のワインの多くには、高い揮発酸と糖が残っていると言われていることを見ると、それも大して意味のある論争でないのかもしれない。05年に広く受け入れられていた原則は、発酵途中の過度な熱を、とりわけその最終段階において避けるということで、ほとんどの場合、通常よりかなり低い温度で醸造が行われていた。

アルコール発酵が難しかったので、マロラクティック発酵も一般にそれ以上に難しいものとなってしまった。アルコール発酵の終了前、あまりに早い時期にマロラクティック発酵が始まってしまう傾向があった上、非常に冷涼だった11月にまでそれが長引いてしまうこともあった。きちんとコントロールできなければ、まずは揮発酸が一層増す危険があり、ついでブレタノミセスによる汚染の可能性もあった。

マロラクティック発酵を促すために、ワインを急いで樽に移すのが90年代のトレンドだったが、そのトレンドも2年連続で後退基調にあるようだ。今では澱引きせずにリーコンタクトさせるための手法として、かなり選別的に採用されているに過ぎない。スタイリッシュな果実味に溢れているとはいえ、これほどパワフルなワインであるから、3月に体裁を整えるためだけに、ヴィンテージの持つフレッシュさのみを前面に押し出すリスクを犯すのは忍びないと、多くの人が考えている(おやまあ!JR=筆者記す)。自動車修理工場の経営者まがいの連中ですら、このワインにとっての新たな完成形のあり方を模索中だと、こぞって語っているのである。

いずれにしてもこのヴィンテージに関しては、ワインメーカーに「造る」必要を感じさせなかった。技術的に正しい軌道に乗ってさえいれば、人が手を加える必要はまったくない。結果的に選果台で取り除かれる果実は少なく、セラーでも人工的な凝縮作業はまったく必要とされず、そして通常よりも25%果実が小ぶりだったため、“セニェ”(血抜き)の必要もほとんどなかった。偉大なる自然の導くままにすべてが始まり、進んでいったのである。

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■収量

9月8日、ボルドー向けの公式収量制限が発表されだが、その数値は予想以上に低く押さえられていた。同年初頭のブドウの抜根計画と蒸留プログラムに対する、ボルドーからのはかばかしくない回答に、パリの当局が失望したからだというのが、もっぱらの噂である。

この年は基本的な上限は定められたものの、もし栽培家がタンク別のテイスティングを受け入れるか、一定量を“レギュラー・ストック”として翌年の不足に備えて保存しておくことを受け入れた場合に限り、特別認可分が設けられた。つまり、たとえばボルドー・ルージュの収量は1ヘクタールあたり51ヘクトリットルに定められているが、タンク別のサンプリングを受け入れれば、それに3ヘクトリットルが上乗せされる。そしてメドックでは、49ヘクトリットル+“レギュラー・ストック”分6ヘクトリットルが認められる。許容された全収量の合計は、ほとんどのアペラシオンで前年度の上限と同じか、若干低く設定されていた。

いずれにしても、花ぶるいと乾燥のためにブドウの粒が小さく、自然と収穫量が落ちていったため、収量制限を大幅に下回る結果となった。格付けクリュを例にとるなら、右岸の生産量は前年度の38〜50ヘクトリットルに対して約30〜44ヘクトリットル、左岸では前年度の45〜55ヘクトに対して40〜50ヘクトリットルという結果であった。しかしもちろんこのような年には、セカンド・ワインの割合は少なくなるだろうが、これでいくぶんあるべき姿に戻るのではないだろうか。

いっぽうでソーテルヌに目を向けると、近年まれにみる多収量の年となっていた。落果を引き起こす腐れが起こらなかったのが、その実に単純な理由である。ほとんどの格付けクリュの収量は15〜25ヘクトリットルで、無名シャトーの多くでは20〜25ヘクトリットルであった(法律によって定められた上限は25ヘクトリットル)。

最後に、ジロンド河岸全域におけるACワインの収穫量は61億400万ヘクトリットル。豊作だった04年よりも17%、過去五年間の平均より5%も少なかった。

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“gentle(やさしく)”に“gentle(やさしく)”に。合言葉がうつってしまいますね!さて、次回はいよいよ最終回。皆さんが一番の関心である実際のワインの味わいについてです。最後に気になるのはやはりその味ですよね。次回も是非楽しみにしていて下さい。

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