2005年のボルドーに関するブラッチ報告書[その4]
〜ワインについて・後編〜
第4回目の「ボルドー編」のワインニュースブラッチ報告書〜ワインについて・後編〜です。これで「2005年の奇跡の ボルドー」についてはひとまず終了となります。最後のレポートはいよいよ、その味わいについてです。世界のワインの量を決めるという、ネゴシアンが判断する今年のヴィンテージ。その味の総評は一体どういうものなのでしょう?いざ、ご覧下さい!
ワインについて
■辛口白ワイン
このヴィンテージに溢れている果実味は、まさに桁外れである。ソーヴィニョンは熟したリースリングのように、石油香がありながらフリンティー(火打石っぽい?)で、完熟味と生き生きとした酸のコンビネーションを兼ね備えている。非常に小粒で厚い果皮の果実から絞られたセミヨンは、アルコール分が高く、かなり顕著なグレープフルーツ香に富み、時としてソーヴィニョン以上に純粋にフルーティーである。
これらのワインが、酸に乏しい2003年よりも、フルでリッチな2000年タイプに近いことは確かだろうが、そのどちらのヴィンテージに比べてもフルーツにより一層ナーバスなところがある。
8月終わりと9月はじめに、非常に早く収穫をすませたペサック・レオニャンのワインは心地よく滑らかで、当初持っていたくっきりとしたアロマを取り戻しつつあるところだ。非常に良質なワインに向けての、発展途上にあるといえる。
早めに収穫されたストレートなボルドーとグラーヴは、明らかに遅めに収穫したものよりその表現力に劣る。ブドウ中のアロマが、いつものように完熟前ではなく完熟後に生成されたことが、その理由である。
アロマが持続することを前提にすると、おおむね素晴らしい白ワインのヴィンテージになったと言えよう。要するに、パワフルな03年とフリンティー(火打石っぽい?)な04年の中間といったところだろうか。
■赤ワイン
2000年と同じように、右岸でも左岸でも、メルロもカベルネも、ボルドー地方全域で高い潜在能力を秘めたヴィンテージとなった。それぞれの地区の間で、主に降水の有無に起因するちょっとしたバリエーションはあるかもしれない。6月と7月には右岸よりも左岸でかなり多く雨が降り、8月はその逆、そして9月の初旬には右岸で、終盤には左岸で雨が降った。つまり、すべてにおいて非常にバランスが取れていた。
すべての赤ワインは82年、90年同様に、完熟したヴィンテージ特有の甘い果実味を備えているが、82年のようにすぐにファットになってしまうことも、90年のようにロースト香が強くなってしまうこともない。そして何よりも、それらのワインの中では、豊かなアルコール分が(メルロはしばしば14-15°、カベルネは12.5-14°)法外にタニックな一撃と結びつき、―もちろん醸造方法にもよるが― 、ワインを保存する価値のあるものに仕上げている。8月の暑さのせいか、柔らかでより早く熟成してしまった29年、47年、03年よりも、タニックな28年、45年、00年とスタイル的に共通点するところが多い。
今のところ、多くのワインがとてつもなくタニックで、そのタニックなストラクチャーの中にも苦みすら感じさせ、70年や75年、そして時として右岸のワインでさえも、98年的な様相を示している。
もし雨が降らなかったら、おそらく95年のような経過をたどっていたかもしれない(ここまで乾燥してはいなかったが、他の点では似たような夏だった)。あるいはひょっとすると、この種のヴィンテージを評価することに、わたしたちが慣れていないのかもしれない。ここ最近の暑かった年のヴィンテージには、ホットな味わいがあった。これほどまでの凝縮感のある完熟味と、これほどまでにフレッシュでタニックな要素のコンビネーションをテイスティングした経験が、近年まったくないのである。
■ソーテルヌ
初めのうちこそ05年のソーテルヌは、超パワフルな21年や、超甘口の03年など、乾燥を特徴とする年と似たものになるだろうとイメージされていた。ところがそのどちらとも、ほとんど共通するところがないようだ。パワフルな点で評価の高い21年ほどパワフルではなく、03年のように突拍子もないほど甘くもない。05年は非常に乾燥した条件下にあったにもかかわらず、上記のふたつのヴィンテージよりも、リッチではあるが繊細でエレガントな01年とより共通したものがある。
8月の終わり頃になると、すでにボルドーの他の地域より若干大きく生長していたブドウは、13°から15°の潜在アルコール度数を保ちながら“完璧に黄金色の段階”に突入、湿度が高くなって条件が整えば、ボトリティス菌が発生する状況となっていた。8月17日には10mm、そして8月31日にはもう一度にわか雨が降った。この二回のにわか雨が重なり、すみやかにボトリティス菌が繁殖、9月11日から12日に入ると、ブドウはロゼに色を変え始めた。9月18日から22日の夜が非常に冷涼でなかったら、9月12日から18日にかけてのにわか雨が、2003年同様に驚くほど急速に広がったボトリティス菌の繁殖をさらに早めていただろう。しかし夜間の冷え込みがボトリティスの繁殖を遅らせ、2003年のように一週間に一度のペースで大急ぎで収穫するのではなく、五週間のあいだに4-5回に分けての収穫が可能になるなど、収穫のペースも変化していった。
腐れが起こらなかったのは、実に久しぶりのことだった。すべてが健康かつ規則的にボトリティス化し、ボトリティス菌が広がったブドウから、余裕を持って摘み取られていった。最初の収穫はおおむね9月26日の週に、日曜のにわか雨の直後に始まった(メドックに20mm、内陸部に30mmの雨を降らせたのに対し、ソーテルヌには10mmの雨を降らせた)。その収穫の結果、規則的なボトリティス化のたまものである20-21°の大量のマストが得られたが、そのマストはすばらしく純粋で上品さを兼ね備えていた。それから時間をおかず、10月はじめの好天の中で、より大規模な二度目の収穫が開始され、しばしば潜在アルコール度数23°前後にも達し、またしても純粋に混じり気のない、より力強いマストが得られた。この二度目の収穫が、ほとんどのシャトーでヴィンテージの主要部分を占めることとなった。
ほとんどのシャトーでは、10月12日から15日のにわか雨の間、収穫は中止となった。そして雨の直後に暑さが戻ってくると、遅れてきたボトリティス菌があっという間に繁殖し、さらにリッチなマストを提供してくれた。あまりにもリッチであると考えた者も多く、そのためより時間的に広がりを持って収穫されることとなった。これが素晴らしい三度目、四度目の収穫を行った理由であるが、この収穫は10月の終わりまで続くこととなる。
非常に少数の造り手に限ってのことだが、他と違って早い段階でボトリティス菌が繁殖しなかったために、誰もが作業を終えようとしているこの時点で、初めての収穫を行った者もいた。つまり、10月終わりの極端な暑さのさなか、ついにボトリティスが一斉に繁殖を開始した際に、彼らのブドウは糖度を高め、黄金色に色づいたのである。そんなわけで、これらのワインはよりリッチで甘い。それらがより上質なものになるか、単にリッチなままで終わるのかを見極めるのは興味深いことだ。
10月終わりになっても、いまだに樹上にブドウを残していた生産者は、11月3日から4日の激しいにわか雨のあとに、最高の凝縮感に富み、ファットで、フルで、おそらくは洗練されたスタイルに欠けることになるだろう、四度目と五度目の収穫を行った。
以上のことから明らかなのは、主軸となる二度目の収穫の純粋だが凝縮感のあるスタイルのおかげで、卓越したヴィンテージが到来したということである。01年の驚異的なバランスに似たところはあるものの、2001年の持つ溌剌とした酸には若干劣るかもしれない。同じようなスタイルを特徴とする05年が、01年を王座から追い落とすのは難しいにしても、そのはるか後塵を拝することはないだろう。
ブラッチ氏をして「近年全くないテイスティング経験」という赤ワイン。そんなブラッチ氏の熱気から、やっぱり今年のボル ドーは素晴らしい出来栄えだと伺えます。私達もレポートだけでなく、実際に飲んで感動を体験したいものです!さて、4回に渡るブラッチ報告書は今回で終わりとなりますが、ワインニュースは随時更新していきます。お楽しみに!
